わたしとあなたのありのまま

「ああ、携帯……」

田所は私に言われてようやく、思い出したみたいだった。


そして――

「忘れた」

悪びれることなく、涼しげに言う。


「忘れたって……なんで?」

「『なんで?』って聞かれても、忘れるのに理由なんかねぇよ」

田所は相変わらず無表情のまま答える。


「でも、その上着のポケットに入れたでしょ? それ、わざわざそっから出したってこと?

そりゃあ一歩間違えば、怪我させてただろうし、本当に申し訳ないことしたと思ってるよ。だけど私、謝ったし、携帯一晩拉致されたわけだし、もう、十分でしょ?」



私の苦情染みた言葉に、田所の顔色が変わった。明らかに、不機嫌度がアップした。



田所は、ツイと一歩前に出て私との距離を縮め、

「なに? お前、俺を非難してんの?」

少し身を屈めて顔を近づけ、低い声で威圧的に言う。