教室へ戻ろうと、体育館から校舎へと続く渡り廊下を綾子と二人、並んで無言のまま歩いていた。
「秋山」
呼びながら、山田が私に追いついて隣に並んだ。
チラと視線を山田にやるも、すぐに俯いてしまった。
そんな私には構わず、山田は話し始めた。
「あくまで噂だから。
根も葉もあるかもしんねぇけど、それでも噂は噂。
噂みたいなもん、尾ひれが付いて出回るもんだ、気にすんな」
「うん」
なんとか返したけれど、視線は足元の簀の子から上げることができなかった。
「だいたいさぁ、あいつは母親から溺愛されてたんだ。
そのせいで、あんなにも我侭で、恐ろしく手の掛かる甘えん坊に育ったんだよ。
可哀想にな。
好きでもない男の子どもだったら、きっと愛せない、だろ?
あんなクソみてぇな噂、信じるな。
お前の目に映る田所だけを見てやれよ」



