わたしとあなたのありのまま

教室出入り口から、綾子と二人、そっと中を覗き見た。


「いませんね、綾子さん」

「そのようですね、ほのかさん」


男子たちの注目を浴びているせいで、背中に冷たいものが伝う。

嫌だ、あのギラギラした視線が。そして、辺り一帯の空気が男臭い。



「帰ろう、綾子。私もう、限界です」

「ええ? ここまで来てぇ?」

綾子が不服だと言わんばかりに、唇を尖らせる。



そうだよね、綾子には無理矢理頼み込んで、ついて来てもらったんだもん。そら、納得いかないよね。


でも私、男子って苦手で。だからわざわざ、女子が大半を占める私立文系クラスを選んだのだし。



「そこ、邪魔なんだけど」

背後から声がし、振り返るとそこに、田所悠斗が立っていた。