わたしとあなたのありのまま



 田所はクルリと向きを変えて体育館出口へ向かって歩き出した。
 涙で霞む視界の中、田所の背中は遠ざかっていく。

 体育館シューズを履いたまま、体育館横のアスファルトへと躊躇なく降りて、田所は歩き続けた。
 そのまま家に帰るつもりなのだろう。


 追いかけることができなかった。


 田所のお父さんが犯罪者かもしれないと知って、嫌悪感を覚えた?
 違う、そうじゃない。

 私は、『田所悠斗』が好きなのだから。
 父親がどうとか、そんなこと関係ない。

 ただ……
 今、私なんかにできることは何もない気がしたから。

 降り注ぐ雨に為すすべなく湿ってゆく、今にも崩れてしまいそうな背中を、追う勇気がなかった。