わたしとあなたのありのまま

「携帯返してもらえるかなぁ」

足元を見詰めたまま、ボソボソ呟いた。


「そら返してくれるでしょ? そうじゃなきゃ、泥棒じゃん。いくら性格悪くたって法にふれることまでしないっしょ?」


私の気も知らず、綾子は軽く笑い飛ばす。もう、人事だと思って……。



「田所、性格悪いんだ。カッコいいのに、もったいない」

また独り言がこぼれてしまう。


「カッコいいからって、調子んのってんじゃない?」

綾子はそう言って、ひゃははと笑った。


返しに来るとしたら、バイト先? いや、私があの時の店員だとか、あいつが覚えているかなぁ。わざわざ携帯返しに、用もないのにコンビニ来るとも考え難い。


多分、明日学校で返してくれるんだよね。



田所、私はあなたを信じています。

どんなに性格悪くても、他人の携帯を悪用したり、どっかにポイしたり、恥ずかしい写メ勝手に見たりなんてしないと。