「こうなってもまだ、エリカ先輩と別れる気ないとか。

 エリカ先輩、
 田所が自分のこと好きじゃないって、絶対気付いてるよね」

 綾子はそう続け、最後の方はしんみりと呟いた。
 まるで、エリカ先輩に同情しているかのように。


「そう考えると……
 残酷だよね」

 言って、何故だか私も一緒になってしんみり。
 私もなんとなくエリカ先輩に同情したくなる。


 狙ってか、狙わずか、どちらにしても、これは田所効果なのだと思う。
 まさに、田所イリュージョンだ。


 でも、
 例え田所が自分のことを好きではなくても、
 それでもエリカ先輩は、田所の彼女でいたいわけで。

 自業自得だとも思う。


 恋愛に、明瞭な善悪の基準などないのだと、
 16歳にしてようやく、私は知った。