「そうそう、あいつらみたいな、ね。超問題児よ、ったく」
「でもさ、なんか最近やけに大人しくない? 改心でもしたとか……」
「まさか。あいつらが静かにしてるなんて、むしろ不気味だわ。嵐の前の静けさってやつ?」
 緑髪が柔らかい髪を解きながら困ったように笑って見せると、黒髪も同じようにいたずらっぽく笑ってみせた。
「さあ、こんな話は終りにしてそろそろ交代の時間よ。お昼でも食べに行かない?」
「いいわね。今日は何にしようかしら」
 二人が笑い合い、その場を後にしようとした時だった。
 ──────……。
 突如けたたましく鳴り響いたサイレンは、どう考えてもお昼のチャイムではない。耳障りなサイレンの後、焦りつつも凛とした声の放送が入った。
「ひ、非常事態発生。非常事態発生。L0000号と4682号の二体が今朝から行方不明である事が判明している。至急捜索を開始し、発見次第、迅速に捕獲せよ! 繰り返す──」
 狭い廊下に響く放送は、警備員達を一斉に走り出させた。
「あー、もう! L0000号と4682号ですって!? やっぱりあいつら何か企んでたんだわ!!」
 そう叫んでヒステリックに緑髪をかき乱す警備員も、黒髪に促されて走り出す。
「しっかりしなよ。嫌な予感が的中したせいでお昼はお預けだけどね」
 不安のせいからか涙目の緑髪の手を引き、彼女は悪戯っぽく笑って見せた。
「見つけ次第捕獲しろ! 繰り返……ガガガ」
 何度も繰り返されていた放送にノイズが入る。その直後の事だった。
「あー、あー。マイクテス、マイクテス。音、ちゃんと入ってる?」
「当たり前だろう、僕が繋いだんだぞ」
 その声は間違いなく朝から行方不明の問題児二体の声だった。
「やあ、少しの間放送を借りるよ。分かっているとは思うが、僕はL0000。気軽にエルと呼んでくれ」
 突然の放送ジャックで更にパニックになる警備員達の叫び声は、細い通路に木霊していた。