「…緊張しますね。」


「…そうですね。」




それが、私と江古田さんの初めての会話だった。




長年の接客業ですっかり慣れてしまった愛想笑いを顔に貼りつける。






江古田さんの第一印象は悪くない。



でも、この人だ、と思えるほど良いのかと問われたら私は頷くことができないだろう。


つまり、結局どちらの意味でも心を動かされていないのだ。






「江古田さん、ご趣味は?」



こういう時の、きっともう何十年と使い古されてきた質問をした。


「僕は、釣りですね。」




趣味まで平凡か。


「素敵なご趣味ですね。」



素敵かどうかは正直分からないけど、他に言葉が見つからなかった。




江古田さんは照れ臭そうに笑う。