最後の大会当日、会場に集合した僕と生徒たち。
みんな緊張している様子だったが優勝への意気込みはひしひしと感じとれた。

「ごめん遅刻だー」

いつも一番最初にくる夏希が少しだけ遅れてきた。
遅刻など決してしたことが無かった夏希にしては珍しい。

「おいおいキャプテン頼むよー」

僕もふざけて夏希を茶化した。
それに夏希は変な顔で返してきた。

大会はトーナメント式で負けたらそこで引退という形式だった。
去年までの成績を調べてみたら仲本学園は初戦敗退だった。
まあ学業優先の校風を考えれば、違和感はない。

しかし今年は違うぞと誰もが確信していた。

その思い通り仲本学園は決勝まで駒を進めた。
他の学校からは驚きの声が上がり、観客席には校長の姿もあった。

「お願いします」

試合開始のとともに、歓声が飛び交った。
試合はセットカウント1対1の接線で次のセットを取ったチームが優勝である。
緊迫した展開に誰もが息を呑んだ。

その中でも夏希は間違いなくうちのチームを引っ張っていて、
それを見ている僕たちは夏希がいれば、という安心感があった。

23対23

25点を先にとったほうが優勝である。
相手チームの攻撃で相手チームが先にマッチポイントを迎えた。

しかしこちらも負けてはいない。
相手のサーブを丁寧にセッターに運び、アタッカーの夏希へと繋げた。

「ピー」

試合終了のホイッスルが会場中に響き渡った。
相手コートに歓声が湧き上がる。

「夏希っ!!」

僕は夏希に駆け寄った。
最後、夏希に向けて繋げられたそのボールの先に夏希の姿はなかった。

誰もが完治したと思っていた膝はほとんど治っていなかったのである。
夏希はそれを隠して部活に復帰していた。

そんなことを毎日毎日一緒に過ごした僕はまったく気がつくことができなかった。