【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






水族館を出たあと、あたしたちはまた車でどこかへ向かっていた。





ステレオから流れる、アップテンポな曲が体の内側を震わせる。






「〜〜♪」






曲に合わせて、暁くんは上機嫌に鼻歌を歌っていた。




その声が、異常なまでに色っぽくて。





あたしの耳をくすぐるように、綺麗にメロディーを刻んでゆく。





ドキドキするあたしをよそに、暁くんは手慣れた様子でハンドルを回した。





うわ~…、かっこいー…




車は黒で、わりと大きめな乗用車。




長いフォルムがすごくかっこいい。





オシャレな暁くんによく似合う車だと思った。








暁くんは、やっぱり大人だ。





なんでもないような顔をして、あたしにイルカを買ってくれたり。




優しくて甘い声であたしの名前をよんでくれて。



温かくて、意外と力強い手であたしをリードしてくれて。





心の中がふわふわするような柔和な笑みで、あたしを惹きつけて。





ああ、あたし。




暁くんが好きなんだなぁって。





もう、引き返せないとこまで来ちゃったって





今ごろ、気づいてしまった。