【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐




そんな時、暁くんはにこりと笑って一言。





「柚、これプレゼント。」




…えっ!?





さらり、と簡単に言ってのけた暁くんにも驚いた。




だって、八千円だよねこれ!?





ゲームのソフトより高い買い物なはずなのに、暁くんは何でもないような顔をして、微笑んでいる。





…大学生って、結構大人買いしちゃえるの?




というか、暁くんだけ?




「いらない?」





なにも反応を示さないあたしが困っていると判断したのか、暁くんは少しだけしゅんとした。





あたしは慌てて鞄からボードを取り出してそれに答えた。






“そんな高いのもらえないよ。”





「えー、でも買っちゃったしな…。」





男の部屋にこんなの置いといたら、友達に間違いなく引かれちゃうんだけど。



と、暁くんは苦笑を浮かべた。






暁くんの部屋は見たことないけど、なんとなく想像してみた。




イメージでは、綺麗に整頓されてはいるけど男の人っぽい部屋。





でもベッドの上には、大きなイルカのぬいぐるみがある。





…うん、なんか可笑しい。




あたしが笑みをこぼしたのを見て、暁くんも困ったように頬を掻いた。