そんなときだった。
「柚。」
後ろから聞こえたのは、紛れもなく暁くんの声。
ホッとして、ぐりんっと勢いよく振り返ったその時。
ぼふんっ
顔面に何かが衝突した。
ただ、それが柔らかかったのが幸運で、ちっとも痛くなかった。
「ぅおっ、と…!」
それの向こう側から聞こえた暁くんの声も、びっくりしてるように聞こえた。
「…??」
顔や体に当たっているそれはふっわふわの何かで、あたしは2、3歩下がって確認してみる。
「ごめんね。大丈夫?」
心配顔の暁くんが抱えていたのは、あの大きな水色のイルカのぬいぐるみだった。
「…――!?」
あたしは想像もしてなかったそれに驚いて目を見開いた。
そのぬいぐるみは、あたしよりもずっと体が大きい暁くんが持っててもだいぶ大きく見えた。
それほどまでに、これは大きかったのだ。

