【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「そう、じゃあ行ってみようか。」





暁くんに手を引かれながら、あたしは内心で決心をしていた。






3000円以内なら、即購入してやるんだから!!





あのぬいぐるみを抱き締める自分を想像して、自然と頬が緩んだ。






「へぇ、たくさんあるな。何か欲しいものあった?」





あたしは迷わず、あの棚の前へと行く。





背伸びをしてそれに手を伸ばしてみるが、届かない。




思ったよりも高い位置にあったらしい。





あー!もう!




届かないとか、カッコ悪すぎ!!





水色のイルカは、目の前にあるっていうのに!!






「…これ?」





え……





取ろうと奮闘していたぬいぐるみは、後ろから伸ばされた手で、ひょいといとも簡単に持ち上げられた。





「はい。」





どうやら、あたしの手が届かないのを見かねたらしい暁くんが代わりに取ってくれたらしい。





あたしが頑張っても届かなかったのを、あんな簡単に取っちゃうなんて…。





暁くんって、やっぱり男の子なんだなぁって改めて感じた。