【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






それから、暁くんと一緒に水族館をまんべんなく回って、イルカのショーも見た。




イルカ、可愛かったなぁ…。





水の中を自在に泳ぎ回るイルカを思い出して、小さく笑う。





ああ、でもあとは帰るだけ。




なんで楽しい時間って、こんなあっという間なのかな。




カミサマの、意地悪。







そんな時、ふとお土産屋さんに目が行った。







たくさんのお土産が並ぶ店内の一角に、それはあった。






「――!」





かっ、かわいいっ!!





そこにあったのは、大きなイルカのぬいぐるみ。



ショーで見たイルカそのまんまで、つぶらな瞳が愛らしい。





触っていないが、その感触はふわふわであろうことが容易に予想できた。





ヤバイ、欲しい…――!!





「柚?」





暁くんの呼び掛けで、はっと我に返った。





あんまりにもじっと見すぎていたらしい。





「お土産屋さん見たいの?」





そう!見たい!!






あたしが力強く頷いたのを見て、暁くんは可笑しそうに目を細めた。