【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






暁くんの袖をくいくいと引っ張る。




「ん?」





それに気づいた暁くんは、もう慣れた様子で左の手のひらをあたしに差し出した。





そこに、人差し指で文字を綴る。






「…く、ら、げ、つ、て、あ、か、か、つ、た、つ、け、?…。“クラゲって赤かったっけ?”」





自分が読み上げた言葉が間違っていないか、あたしに確認をとる。




もちろんそれは正解で、あたしはそうだよと頷いた。





「これはね、クラゲが赤いわけじゃないよ。たぶん、ライトで照らしてるんだと思う。」





へぇ…。




あ、そう言われてみれば確かに端のクラゲは透明だ。




なるほどぉ、すごいな。





「楽しそうだね。」





うんっ!!




あたしは、ごく自然に笑って大きく頷いた。





だってね?



本当に楽しいの!





どうして、こんなに楽しいか。




それはきっと…―――。





「次行こう、柚。」






あたしは、繋がれた左手にきゅっと力を込めた。