「ほら見て。カクレクマノミ。」
他の水槽にも、たくさんの魚や生き物がいて。
暁くんは決して急かさず、のんびり、でも効率よくあたしを案内してくれた。
暁くんの大きくて優しくて、温かい手が、あたしの手を包み込んでいてくれるから、安心して見ることができた。
そして、見るもの見るものにいちいち興味を示すあたしに、飽きもせず付き合ってくれて。
本当に楽しかった。
あ。あそこにも何かいる!
「ん?今度はこっち?」
あたしの反応に気づいてくれた暁くんはクスクスと笑うと、あたしの手を引いてそっちに歩いて行く。
「クラゲだ。小さいね。」
暁くんは感心したように呟いた。
あたしも、こくこくと頷く。
腰を屈めないと見えないような低い位置に、壁に埋め込まれた小さな水槽があって、その中を赤いクラゲがふわふわと漂っていた。
…ってかクラゲって赤いの?

