「じゃあ全員揃ったし、早速始めようぜ」
みんなのまとめ役らしい愁生さんがいい、みんなの表情が締まる。
やがて力強く頷くと、それぞれが準備を始めた。
「…あれ、コード。コードがないよオーナー。」
「バカ、横にあるだろ。もっとよく見ろよ」
原田さんが李織さんの横を指差すと、李織さんはあったあったー、と呟く。
「ったく。騒がしくてごめんね。」
特にすることがなくなってしまったあたしは、原田さんとお店のカウンターの所でみんなを眺めていた。
みんなそれぞれ、がやがやと楽しそうに練習の準備をしている。
そんな時ふいに、原田さんが思いもよらないことを口にした。
「なぁ柚姫ちゃん。さっきのことだけど、優輔に会った時にひどく困った顔してたけど、過去のこと知られるのそんなに嫌かい?」
ドクッ…。
心臓が、一瞬嫌な動きをした。
呼吸を忘れてしまったみたいに息が詰まり、思考がフリーズする。
「やっぱりそうなんだな。此花 柚姫、聞いたことある名前だと思ったよ。」
…原田さんは、あたしの過去を知ってる?
どうして?
三年も前のことなのに…

