【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






ゆっくりと優兄に肩を押され、トサリと椅子に腰を下ろすと優兄は振り返って明るい声を出した。





「柚と会ったの一年ぶりでさ!こいつめっちゃびっくりしてんの。」





そのお陰で、張り詰めていた周りの空気が緩む。





「でもびっくりしたよ。柚とアキが知り合いだったなんてさ。」





「いや、優輔が柚姫ちゃんと幼なじみだってことの方が衝撃的だったよ。」




という暁くんの言葉に、確かに、と李織さんも便乗する。






「ははっ、マジか。柚とは小さい時に弟よく一緒に遊んでてさ。妹みたいなものなんだ。」





な、柚。


と優兄に話をふられ、コクコクと頷く。






「こんな可愛い幼なじみがいるとか、ずるい。」




と、李織さんが抑揚のない声で言う。



相変わらず、表情らしいものはないから本気でそう思ってるか判断に苦しむが、周りはちっともきにしてない風だった。






「だろ?柚に手ぇだすなよ、李織。」





「…残念。」






そう言いつつ、ちっとも残念そうに見えない。





李織さんは、くぁぁっとまた大あくびをした。