優兄は、あたしの事情をよく知る人。
アキちゃんのことも、あたしの声のこともよく知ってる。
アキちゃんの死で、すさんだあたしの心を癒してくれたのは紛れもなく優兄と京ちゃん。
そんな大切な人のはずなのに、あたしは…。
「…柚?」
ガタンッ
自分でも、驚いた。
名前を呼ばれただけで無意識に、弾かれたように立ち上がっていた。
「…っ――――」
ごめんなさい、と伝えようと口を開くが、声がでないことを思いだし、再び口をつぐむ。
そんなあたしのそばに歩み寄った優兄。
「柚。」
いつもそばで見ていた、あの包み込むような優しい微笑みを浮かべて、ポムポムとあたしの頭を撫でる。
ああ、あたし今ひどい顔してるだろうな。
そんなどうでもいいことが考えられるくらいに、あたしは優兄のお陰で落ち着きつつあった。
あたしが落ち着いたのを確認した優兄は、小さな声でぽそりと呟く。
「大丈夫、誰にも言わねぇから。心配するな。」
身勝手だけど、ホッとして力が抜けた。

