【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






…そう。




私と優兄は、3歳離れた幼なじみ。




家が隣で、小さい時は優兄と優兄の弟の京ちゃん の3人でよく遊んでいた。




京ちゃんは同い年で、今も仲はいい。




そして、あたしたちが組んでいたバンドのギターも担当していた。





優兄は、大学へ進学した一年前に家を出て独り暮らしを始めたから会ったのは久しぶりだった。





久しぶりに会えたのは、喜ばしいこと。






だけど、今は…。








「…――――」






「柚!久しぶりだな。元気か?」





優兄の問いかけに、うつむいたままコクリと頷く。




それでも優兄は、嬉しそうにあたしに話しかけてきた。




だけどあたしはどうしようもなく、焦っていた。







「それで、なんでここに?」





「ちょっとあってね。折角だから練習見てもらおうかと思って。」





と、代わりに暁くんが説明してくれた。




けど、あたしの頭の中は不安が一杯だった。






暁くんに、知られてしまう。




ただそれだけが、嫌で嫌で。





きっと知ってしまったら、今までみたいには接してくれなくなる。





それが、嫌だったから。