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「へぇ、李織がねぇ。」
面白そうに、愁生さんが呟いた。
あれからすぐ、愁生さんと優兄がリコールへとやって来た。
暁くんだけは、他の友達にも引き留められているらしく、もう少しかかるらしい。
そして、二人が原田さん特製のアイスティーを味わって落ち着いてから、あたしは早速さっきの出来事を話したのだった。
「懐かしいよな。」
「Rainが出来たばかりの頃だろ?あの頃はもう、下手で下手で」
優兄の言葉に、愁生さんが苦笑いを浮かべつつ答えた。
「アキに誘われた時は、遊び程度に考えてたんだけど、実際やってみたら予想以上に難しくて。けど、やたら楽しくてさ。」
うんうん、と頷く優兄。
「しかも、アキがうまいことうまいこと。追い付きたくて、必死に練習したよ」
「暁くんって、当時からあんなに上手だったんですか?」
「まぁね。けど、やっぱ当時より今のがずっと凄い。」
そうだったんだ…。
「李織も化け物みたいに上手いし。負けてらんねぇー!みたいな?」
おどけた様子で愁生さんが言い、あたしと優兄はクスクスと笑った。
「龍とも、よく喧嘩したよな。」
…龍?
知らない名前にあたしがきょとんとしたのに気がついた愁生さんは、一瞬しまったといった顔をする。
「あぁ、ごめん。まだ言ってなかったよね。龍ってのは、結成当時のヴォーカルだよ。途中で抜けた奴。」
そう言えば、とあたしも思い出す。

