彼女が聞き役で、俺はずっと喋って。




いつもと違うことに戸惑いながらも俺は、柚姫ちゃんの存在を心地よく感じ始めていた。








「お。柚姫ちゃん、掃除終わったのかい?」





原田さんの言葉で、はっと我に返る。




ニコニコ笑う原田さんの視線の先では、柚姫ちゃんがスッキリした顔でモップを持って笑っていた。




彼女のそんな笑顔一つに、俺はありもしない心が温かいもので満たされるのを感じていた。





「お疲れさま。座りなよ」




俺が隣の椅子をひいてやるとモップを片付けて、とてとてと小走りでやってくる。




ちょこんって座った彼女は、初めてあった瞬間よりも少女らしさがにじみ出ていて、俺の顔にも自然と微笑みがあった。






「これからバンドのみんなが来るんだ。きっとすぐ仲良くなれるから」





“うん。楽しみ”






君は、磁石で文字を書く例のマグネットボードにそう書き込んで笑った。