けれど、と言葉を繋ぐ。




「わたしはあの子のこと、何にもわかっていなかった」




アキちゃんの、お母さん…?




あたしが困惑していると、アキちゃんのお母さんはテーブルの上に一冊の手帳を置いた。




見たことのないものだった。





「あの、これは…?」




「瑛の日記よ」





アキちゃんの…!




もう一度その手帳を見ると、確かにアキちゃんの好きそうなデザインだと思った。





「事故のあと、あの子の部屋で見つけたわ。」




「…中を見てもいいですか?」



「どうぞ」





言われるまま、最初の一ページ目を開いた…。










20××年 11月3日。




今日、バンドを組んだ。


あたしと、同じ一年生の柚とモモと京輔の四人で。


名前はArice。


きっかけは、学校祭でのライブだった。


柚がボーカルとリズムギター、あたしがベース、京輔がリードギター、モモがドラムス。


これからが、楽しみ。






これは、Ariceを結成してから書かれたもののようだった。




毎日毎日、書いてあるのはAriceのことばかり。



アキちゃんがどれだけAriceを好きだったか、伝わってくる。









12月3日。



柚の歌がどんどん上手くなる。すごい!

音域も、伸びも、成長が止まらない。


みんなも、それぞれパートの腕をどんどんあげてる。


あたしも頑張らなきゃ。







12月20日。



最近、柚の元気が無い。


理由を聞いても教えてくれないし、おまけにしばらく活動を休止しようとか言い出した。


とりあえず、今日はなんとか説得して続行できることになった。







そうだ、その時は確か…。