【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





くるりとあたしが踵を返したのよりも早く、彼はあたしの前に先回りした。





「つれないなぁ。じゃあ、ちょっとお喋りでもしようか。ここは寒いから、あたたかいところで」




段々イライラしてきた。




キッ、とあたしが睨み上げると、反対に彼はニッコリと笑う。



…っ




その笑い方が、あの人に似ていて思わずたじろいでしまった。



それに気付いたのかどうかはわからないけど、エドガーさんは面白そうにほくそ笑む。




やっぱり、この人苦手。




隙を見てエドガーさんの横をサッとすり抜けた。





「へぇ、機敏だね。」




ばかにされてる気がする。




「わかった。君にこういう手は通じないんだね。じゃあ、こうしよう」




何をしたって、あたしは…




「これを君に。」




後ろでエドガーさんの声がしたと思ったと同時に、突然目の前に人影が現れた。




きっちりと燕尾服を着こなし、ピンと背筋を伸ばした初老の英国風紳士。




確か、沙夜ちゃんを連れ戻しにきたときに…




「申し訳ないけど、ギルバートは生粋のイギリス人でね。日本語はあまり話せない。」




執事のギルバートさんはあたしに一礼したあと、サッと一通の手紙を差し出した。




「本題に移ろうか。」




本題…?




「それは君に渡すために持ってきたものだよ。受け取ってくれるね?」




わざわざ、手紙を?



不信感一杯だったけど、ギルバートさんは受けとるまで通してくれそうになかった。




渋々受け取り、ひっくり返したりしてじっくり見てみる。



すべて英文で、あたしには読めなかった。