【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






クリスマスはもうすぐで、この街もいつの間にかクリスマス色に染まっていた。




カップルがイチャイチャしながら歩いていて、いいなぁとか思ってしまう。





だけどすぐに頭を振って、考えないようにする。




白いダウンをたぐりよせ、あたしはスーパーまで急いだ。





この道路を渡ってしまえば、スーパーはもう目の前だった。





そんな時だった。






「おや、君は。」





なんとなく、聞き覚えのある声だと思った。




振り返った先には、ありえない人物がそこにいた。





「やぁ、レディ。相変わらず可愛いね」





金髪に、灰がかった青(グレイブルー)の瞳、優雅な微笑みを浮かべてたたずむのは、間違いなく彼だった。





エドガー・オルドリッジ…さん。




暁くんの、お兄さん。





たった一度会っただけだというのに、後ろ姿だけであたしと気付いたことに違和感を感じつつ、軽く会釈する。




ついでに、可愛いというお世辞はスルーしておいた。





「落ち込んでいるかと思ったけど、思ったより元気そうで良かった」




にっこりと微笑まれて、あたしは思わず眉を潜めた。




この人、なんでこんなところにいるの?



っていうか日本語話せるんじゃない。




「そんな顔しないで。これから予定ある?ないなら僕に付き合ってほしいんだけど」




ますます意味がわからない。




何がしたいんだろう、この人。


会った時から、この人はあまり好きじゃない。



このまま行ってしまおう。