優兄の言い分は、こうだった。
あたしが帰ったあと、ちょっと送るがてらイタズラを思い付いたらしい。
それが、あれだった。
あたしが本気でビビっているのに気付いた優兄は、焦って追いかけネタばらしをしようとした。
それが逆効果で、あたしは全力で逃げて転んでしまった。
助け起こそうと声をかけたところを、偶然通りかかった京ちゃんが変質者と勘違いして殴り飛ばした。
…ということらしい。
「マジ最低、二度と家の敷居は跨がせねぇ」
「誤解なんだって、ホントに。イタズラのつもりだったんだよ…」
「女にストーカー紛いのイタズラをすることから、まずありえない。そんなの本気で怖がるに決まってんだろ」
「いや、だから………はい、その通りです…。」
「わかったら帰れ、二度と来るな。敷居をまたぐな」
「でももう、跨いじゃったし」
「わかった、今すぐつまみ出す。」
「うわああっ待ってホント待って!」
「知るか」
バッと京ちゃんが拳を振り上げたのを見て、さすがにあたしも慌てる。
間に入って仲裁すると、ようやく二人も落ち着いた。
二人は、昔からこうだった。
仲がいいのか悪いのか。
しかも、弟の方が強いから笑える。
普通、逆だよね。
そのあと、優兄は土下座して(京ちゃんにさせられた)謝った。
“もうしないでね”
「すんなよ、バカ兄貴。」
優兄は、すっかり意気消沈してガックリと肩を落とした。

