【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






やだ、やだやだ…っ!!




恐怖で、バクバクと心臓が壊れそうだった。



息を吸っても、うまく吸えなくて苦しくなる。




なにも考えられず、とにかく逃げるしか出来なかった。





…それが、いけなかった。




ズルッ…!





あの教訓は、すっかり頭から抜け落ちていた。




足元を見ていなかったせいで、氷に気付かず思い切り滑って転んでしまった。




「…っっ」




いった…っ!



膝がヒリヒリと痛む。




急いで立ち上がろうとしたその時。




足音が背後で止まった気配がし、あたしは身体が硬直した。





「おい……――――」





肩に手を置かれた瞬間、あたしの頭は真っ白になった。







「―――や……っ」







「…おいテメェっ!何やってんだっっ!!」





バキッ!と鈍い音がした。





「うわっ、まっ…ちょっとタンマ!!」





…ん?




聞いたことのある声に、あたしはそっと振り返った。




そこには、京ちゃんに馬乗りになられて情けなく助けを乞う、優兄の姿があった…。








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「ありえねぇ、最っ低だよコイツ。マジ兄弟やめたい」




「いやだから、ごめんって謝ってるだろ…。」




「黙れ変態」




「だから違うんだって…」





あれから怪我の手当てをしてもらうため、京ちゃんの家に寄り、京ちゃんの部屋に3人でいる。




ひたすら悪態をつきまくる京ちゃんと、平謝りする優兄。




この兄弟がこうしているところを見るのは、久しぶりだった。




「マジ死ね。ってか帰れ」




「京輔、一回でいいから話を聞いてくれ。頼むから」