「じゃあ、滑るから気を付けていけよ」
ちなみに、別れてから数メートル先でお父さんが滑ったのを見てしまったのは、ヒミツ。
学校での生活も、平凡だと思う。
…一部を除いては、だけど。
「此花さーん、呼び出しだよ」
…この前の美女コンの影響が、まだ少し残っていた。
一週間に、一人いるかいないかぐらいのペース。
すべて断っているのは、恋愛に興味がないからだと思いたい。
中庭でされたそれを丁重にお断りし、男子が去ったあと、ふわりと空を見上げる。
この時あたしの世界は、冬色だった…。
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放課後、あたしは一人で歩いていた。
リコールでみんなと過ごすのは前よりも減ってしまったけど、時々行ったりしている。
今日もその帰りで、家に帰るところだ。
原田さんが出してくれたミルクティーで温まった身体もあっという間に冷える。
早く帰ろう、と足を速めた時だった。
ザッ、ザッ、ザッザッザッ…
後ろで足音も、速まった。
え…っ?
ゾクリ、と寒気が走った。
まさかね、とさらに速度を速める。
…一歩遅れて、向こうも速まった。
ちらり、と後ろを振り向けば黒い人影がサッと身を潜めたのが見えた。
嘘、でしょ…?
恐くなって、思わず駆け出す。
そうしたら向こうも走ってきて、あたしはパニックに陥った。
ザッザッザッ…!
恐い…っ!!

