その時、ポケットにいれていた携帯が震えていることに気付く。
“柚、どこ?もう美男美女コンテスト始まるよー!”
優輝ちゃんからのメールだった。
そのコンテストというのは、人気投票で決まった、カッコいい人とかわいい人を表彰しよう的なものらしい。
あたしは関係ないんだけど、優輝ちゃんの名前が出そうなので楽しみにしていた。
簡単に、今行くとだけ返信し携帯を閉じようとして、初めて気が付いた。
…着信あり、一件。
基本あたしに電話をかけてくる人なんていない。
声が出ないあたしにとって、ほとんど使えない機能だからだ。
まったく気付かなかった。
誰からだろう、と首をかしげていたあたしは、すぐに表示された名前に驚愕する。
暁、くん…?
着信があったのは、午後1時3分。
出れば良かったと後悔すると同時に、電話じゃ何も言えないことに気付き、肩を落とす。
何の用だったんだろう?
かけ直した方がいいかな…?
でも、怖い。
向こうからかけ直されるのを待とうかどうしょうか、悩んでいるともう一つ。
メッセージあり、と表示されていることに遅いながらも気付いた。
ドクンドクンと心臓が早鐘を打っていて、呼吸が苦しい。
指が震え、ボタンが押せない。
どういうつもりで、暁くんが留守電を残したのか、想像もつかない。
まさかわざわざ留守電に悪態なんかを残すとは思えないけれど。
だったら、何…?