【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





夕陽が沈みかけて、空はすっかり藍色に染まっていた。



月と一番星が遠い空で輝いている。



けれど、あたしの気持ちはもっと暗く黒く、深かった。



さっきの出来事が、いつまでたっても頭から離れない。



忘れたくて、考えるのも止めたくて。




でもどんなに走っても、どんなにスピードをあげても離れることはなかった。




一生頭に焼き付いて離れないんじゃないかと、心配になるほどだった。




いつまでもまとわり付いて、何度も何度も繰り返し、あたしの心を突き刺し、深くえぐって行く。



暁くんの冷たい目が、声が、言葉が。



何度も、何度も。




――――忘れてほしい。








忘れるなんて、出来ないよ…!!





あたしのマンションに戻って、後ろ手でドアを閉めたとたんだった。





今まで以上にボロボロと、まるで泉のように涙が溢れだしてきた。




競り上がってくる嗚咽を堪えることも出来ず、息が吸えなくなりそうだった。



熱い喉と目頭はまるで焼けているようで。



膝はガクガクして、ついには立ってられなくなって、座り込んでずっと腕に抱いていたものを更に強く抱き締めた。




ジェシカさんと暁くんがすっごくお似合いで、それもあたしを苦しめていた。



わかってる。


あたしじゃ、釣り合わないことくらい。



だけど、だけど。




もっと隣に、居たかった…!!




強く、強く抱き締めた。




その時。




『ワラッテ、ワラッテ』




え…――――?




『スマイル、スマイル』




腕の中から突然した声に、あたしはゆっくりと目を向けた。