「わかる?君の前ではいい顔をしておいて、俺には別に愛している人がいる。君とは別の女性を」
それが、ジェシーさんなの…?
「君とは遊びだった。だからこれきり。わかるね?」
わからない、わからないよ…。
「今まで俺がしたこと、言ったこと、すべて嘘偽りだ。だから、すべて……」
もう、聞きたくない…。
「忘れてほしい」
とたんに、頭が真っ白になった。
パァンッ!!
静かな公園に、乾いた音が響いた。
熱い目、溢れて溢れて濡れる頬、重く苦しい胸。
そして、胸の痛みよりもヒリヒリと痛む手のひら。
暁くんの頬には、あたしが平手打ちしたあとがほんのり赤く残っていた。
『……暁くんのバカっ!!』
声高に、そう叫んだつもりだった。
けれど結局は空気の塊で、あたしの口が無音声の映像みたく動いただけだった。
そのはずなのに、暁くんには聞こえているみたいに、彼は大きく目を見開いていて。
呆然とあたしの顔を見つめていた。
…その沈黙に耐えられなくなって、あたしは全速力で踵を返した。

