【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





暁くんとは3つしか違わないのに、まるで世間知らずな子供を相手にするかのような態度に、あたしは俯いて唇を噛み締めた。




「そこに車を待たせているの。乗っていってくださいな。柚ちゃん、貴女も自宅までお送りしますわ」




…彼女とこれ以上一緒にいるなんて、ごめんだった。




静かに首を振ったあたしを見て、ジェシーさんはわざとらしく残念そうな顔をする。




「まぁそう、残念。貴女とは仲良くなれそうでしたのに。気を付けてお帰りなさいね」




ぎゅっと腕に力を込め、踵を返す。



すごく頭にきて、どうにかなりそうだった。





「柚、もう少し待って。まだ話がある。ジェシー、悪いんだけど先に車に行っていてくれないか。話が済んだらすぐに行く」




暁くんのその言葉に、思わず足が止まった。




「わかったわ。なるべく手短にお願いするわね」




笑顔ではあるけれど、不愉快に思っているのは確かだった。




「ありがとう。大して時間はとらない。すぐに行くよ」





ジェシーさんを外させてまでする話って?



つい、期待をしてしまいたくなる。



だって、暁くんはいつだってあたしが欲しいと思う言葉をくれたから。




だからもしかしたら今度も、って。





さっきまでのは、嘘だったんじゃないかと。



けれど、あたしの考えは甘かった。






「説明する手間が省けたね。さっき彼女が言ったように、俺は彼女と結婚する。」




深く、深く。



あたしの胸には杭が突き刺さった。