【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「お久しぶり、暁。あなたがイギリスへ戻ると聞いたから、迎えに来たわ。わたしと一緒に帰りましょう?」




「…まさか、君が直接迎えに来てくれるなんて思わなかったよ」



「あら、やだわ。わたし自分では献身的で従順な女のつもりなのだけど。あなたの妻になるんですもの。迎えにくるくらい、どうってことありませんわ」





………え?





「ところで、こちらの可愛らしい女の子は?」





彼女を見上げると、彼女は薄く笑った。




わざと子供扱いしてる…?





「ああ。彼女は柚と言って、…友人の、妹だよ。」




暁くんの紹介のしかたに、一気にいろんな感情が競り上がってきた。




恥ずかしさと、悲しさと、そして…。




「まあ、よかった。あなた、とうとう見境までなくなったのかと心配したわ。女の子遊びもほとほどになさいませ。」




「…もちろん、わかってるよ。」




「えぇと、柚ちゃん…だったかしら?」




ふわり、とあたしの前に一歩踏み出した彼女は、ほっそりとした手を差し出して優雅に微笑んだ。




「はじめまして。ジェシカ・美麗(ミレイ)・オックスフォードですわ。ここにいる暁のフィアンセですの。暁は昔から女遊びが激しくてね?貴女は手を出されなかったかしら?」





…フィアンセ?



フィアンセって、婚約者のことだよね…?




暁くん、この人と本当に…。





「まあまあ、可哀想に。やっぱり貴方何かしたのね?悪い男(ヒト)。」




「…ジェシー、もう行こう。日が暮れる」





あたしが何も答えないのを見て、彼女は的はずれな判断をしたみたいだった。




この人、すごく嫌な感じ。



品があって、綺麗な人なのに。


言葉の一つ一つに、悪意を感じた。