いつもは輝いていて凛とした背中が、なんだかとても…。
「柚、ごめん。もう電話終わったから、こっちにおいで」
え…?
はっと気付くと、暁くんはゆっくりと振り向いて、ニコ…と微笑んだ。
いつから気付いていたんだろう。
それよりも…。
暁くんの悲しげな微笑みに、再びざわざわとした胸騒ぎを覚えるのだった。
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「さっきの電話、聞こえてた?」
“聞こえたけど、なんて言ってるのかわからなかった”
「そっか。」
二人で公園のベンチに座って、遠くの景色を眺めた。
池の水は、西陽を反射してキラキラと光り、鳥は茜色の空を飛んで行く。
綺麗なのに、なんだか寂しい。
「さっきの電話はね、エドガーからだった。覚えてるよね?俺の義理の兄」
こくり、と頷くと暁くんはまたゆっくりと口を開いた。
「…帰る日、決まったよ。」
え…っ?
ドクン、と心臓が大きく鼓動した。
「今週中には向こうに行く。だから…柚とは、これきりだ。」
これきり?これきりって、それって…
「俺はイギリスへ帰る。もう日本へ戻ってくることもないし、あいつらや君と会うこともない。」
一度もあたしと目を合わすことも、微笑むこともせずに淡々と語る暁くん。
その冷たい声に、本当にこの人は暁くんなのかと疑ってしまいたくなる。

