【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






汚したりしたら嫌だから、ともらったぬいぐるみを安全なロッカーに置いて戻ってくると、暁くんの後ろ姿はすぐに見つけることができた。




駆け寄って袖を軽く引っ張ると、それに気付いた暁くんはニッコリと微笑む。




「柚、あのさ…―――」






――――ピンポンパンポーン…




暁くんの言葉に被るように、校内放送がかかった。




―――ご来場の皆さまにご連絡します。本日の櫻鈴祭は、終了致しました。ご来校ありがとうございました。生徒の皆さんは…





あ…、終わっちゃった。




あたしは明日も明後日もあるけど、一般の人が入れるのは今日だけ。




たくさん時間はあったはずなのに、なんだかあっという間だった。




「柚、片付けとか時間かかる?」




確か、簡単に片付けをすればいいだけだからすぐ終わるはずだと、首を振る。




「そっか、じゃあ校門のところで待ってるよ」



暁くんはあたしの返事も聞かず、くるりと踵を返してさっさと玄関の方へと向かってしまった。



暁くんにしては珍しく強引で、ちょっとびっくりした。




だいたいいつもはあたしが頷いたのを確認してから行く。



なんだか、慌てている?




気のせい…、だよね?






暁くんが話してくれるまで待つ、信じると決めたんだから。




念じるように、そう何度も頭のなかで繰り返して、あたしも教室へ向かった。