「(いいんだ、もう。)」
『(いいなんて…!諦めたこと、絶対絶対後悔するんだから)』
…後悔なんて、とっくにしているよ。
どうして、いずれ離れるとわかっていながら日本でかけがえのない友人と居場所を作ってしまったのだろう。
どうして、何より大切に想う存在を見つけてしまったのだろう。
けれど俺は。
「…後悔なんて、しないよ。」
少ない間だったけど、自由で楽しい時間だった。
俺には、十分だったんだよ。
「だから沙夜は気にしなくていい。沙夜は沙夜なりの幸せを見つけて、好きなように生きてくれ」
『…っもうしらない!アキラのバカっバカバカアホっスットコドッコイ!ワカラズヤ!オクビョウモノ!オマエノカアチャンデベソ!!』
プツッ!!ツー、ツー、ツー…
片言の日本語でそう吐き捨てると、一方的に電話を切られた。
…沙夜、意味わかってないだろ。
おまえの母ちゃんって、おまえの母親でもあるんだけど…。
…それに、あの人は出べそなんかじゃなかった。
まったく…。
深くため息をつくと同時に、なんだかひどく滑稽に思えてきて、自嘲的な笑みをかすかに浮かべた。
…オクビョウモノ、か。
かなり痛いところを突いてくれる。
妹に言われた罵詈雑言に、意外とショックを受けてしまっていた。

