「柚…」
ふわり、と暁くんの手が頬に触れて、伏せていた目をそっとあげる。
暁くんの優しい茶褐色の瞳が、心配そうに揺れていた。
心配なんかかけたくなくて、真っ直ぐ目を見て精一杯笑いかけるけれど、暁くんは余計辛そうな顔をしてしまう。
「我慢、しないで」
甘い暁くんの声が耳をかすめ、綺麗な唇があたしのまぶたに押し付けられる。
静かな部屋に、チュッと小さなリップ音が響いた。
「無理して、笑わないで。」
無理なんて…
そんなとき、胸の奥から何とも言えないものが込み上げてきて、あたしは無意識に眉を寄せた。
その何かを押さえ込むように、ぎゅっと。
あぁ、やだ…
さっきたくさん泣いたばかりなのに。
もう、泣きたくなんてないのに。
目頭が熱く、熱くなって暁くんの顔がじわりと滲む。
「言ったでしょ。辛いときは辛いって言っていいって、泣きたい時は泣いていいって。俺が全部受け止めてあげるから。」
その悲しみが、柚を苦しめなくなるまで。
暁くんはそう微笑んで、もう一度あたしの目元に唇を落とした。
その行為が、あたしの涙を掬いとっているのだということに気付いたのは、何度目かのキスをされて、ようやく涙が止まった時だった。
「…止まったね、良かった。」
ふ、と安堵の表情を見せた暁くんは優しくあたしの髪を撫でる。
それから、腫れたら大変だからと冷たいおしぼりを持ってきてくれた。

