「それに、ちょっと自覚してもらおうと思ってね。」
自覚?
「独り暮らしの男の部屋に来て、なんの疑いもなくお風呂入っておまけに寝ちゃうなんて無防備すぎ。これでも俺は男なんだからね?」
と言われきょとんと首を傾げたあたしを、暁くんは不思議そうに見つめる。
「柚?聞いてた?」
“暁くんはそんなことしないでしょ?”
さっき借りたメモ帳にそう綴ると、暁くんは苦笑した。
「俺のこと過大評価しすぎ。――柚が可愛すぎたら、止まらないかもしれないよ…?」
耳元に唇を寄せられて、吐息ともに吐き出された声はあまりに甘くてあたしの脳を支配した。
甘い痺れに身体がピクリと反応したのを見て、暁くんはくつりと笑みを溢す。
「わかった?柚姫ちゃん?」
妖艶な微笑みに逆らえるわけもなく、あたしはすぐに頭を何度も縦に振った。
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「…それで、一体何があったの?」
ソファに肩を並べて座り、あたしは暫く気持ちを落ち着けてから静かにペンを走らせた。
父とは疎遠な関係にあること。
再婚する為に、あたしに家から出るように言ったこと。
全てを吐き出した。
それだけで、あたしの心は幾らか軽くなる。
昔なら全部全部、一人で抱え込んでいた。
誰かに打ち明けるって、こんなにも気持ちが軽くなるものなんだね…。

