【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






あ…、暁くんの匂いだ…。



甘くて温かくて優しい、暁くんの匂いに包まれて、あたしはとても幸せな夢を見られたような気がする。








ふっ、と目を覚ますとそこは見慣れない天井で、あたしは一瞬焦った。



しかしすぐにここは暁くんの家で、ケーキをご馳走になったあと眠ってしまったんだと思い出す。



起き上がって辺りを見渡すとそこは暁くんのベットルームだった。




暁くんの匂いがすると思ったのは、暁くんのベッドに寝てたからなんだ…。



暁くんが運んでくれたのかな。



部屋の中を見渡しても、暁くんはいない。




リビングにいるのかな?




リビングに足を運ぶけど、そこにも暁くんの姿は無かった。




どこに…




他の部屋も探そうかと思ったその時。




「―――…ん……っ」




微かに聞こえた声。



ソファーをそっと覗き込むと、気持ち良さそうに寝息をたてる暁くんがいた。




気持ち良さそうに寝てる…。


やっぱり疲れてたんだ…。



それなのにあたしにベッドまで譲ってくれて。



優しすぎるよ、暁くん…。





「―――…ん……、ゆ…ず…」




うわ…今の、寝言だよね…?



あたしの夢を見てるの……?




ドキドキしながら暁くんの寝顔を見つめる。




きれーな寝顔…。



っていうか、可愛い。




端整な顔に無防備な寝顔が重なっていて、胸がキュンと弾んだ。




あ、風邪ひいちゃうよね。



そう思い、毛布を暁くんにそっとかけた。




“あ、り、が、と、う。あ、き、ら、く、ん。だ、い、す、き、だ、よ”




声にならない、届かない言葉だけれど暁くんの夢に届いてますように…。