【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「まったく、許せないねあのイルカ。」



そんな暁くんの言葉に、あたしは苦笑する。




あれからショーも終わって、水族館の中をまんべんなく見終わったあたしたちは水族館を出ようとしていた。



そんな時、お土産屋さんのイルカのぬいぐるみを見て思い出したのか、暁くんはすごく嫌そうな顔でこぼす。




「こともあろうに柚にキスするなんて、信じられないね。」



暁くんってば、まだ言ってる。



くす、と一つ笑みをこぼした。


「ところで、お腹すいたね。どこかに食べに行こうか。」




………あ!!



うん、と頷きかけてようやく当初の予定を思い出した。




そうだよ、サプライズパーティー!


今頃はみんなが準備を終えた頃だろう。




“あたし、ちょっと行きたいとこがあるの。”



「うん、いいよ。どこ?」



“リコール”



「え?でも今日はお休みだし、みんないないよ?」



“うん、ちょっと用事あるの。ダメかな?”



「まさか。いいよ、行こうか。その用事が終わったらディナー行こうね」



うん、と頷くと暁くんは車を発進させてくれた。





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それからしばらく走って、車は真っ暗なリコールの前へと着いた。


「やっぱり暗いね。原田さんもいないみたいだけど、鍵とかは開いてるの?」



いつもは電飾なんかでお店の前は明るい。



けれど今日は開店してない為、真っ暗だ。



でも先ほど、準備OKとメールは届いている。




「ねぇ、ゆ……わっ!、と。」



暁くんの手を引っ張って、入り口まで誘導する。




突然引っ張ったから、少し驚いたみたい。