【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「たっくさん手が上がっておりますがー…えー、ではそこのカップルのお二人!!どうぞー!」




うそ!選ばれちゃった!?




「やった、選ばれちゃったね。行こう、柚」




ニコニコと楽しげな暁くんは、握ったままの手を離さないでプールの前へと歩いて行く。




実はやりたかったってこと、暁くんにはバレバレだったのかな…?




「わー、美男美女のカップルさんですねー!!よろしくお願いしまーす!」



「よろしくお願いしまーす。」



いつもより明るい調子で答えた暁くんに思わず笑みが漏れて、それからあたしも小さく頭を下げる。




「えー、ではまず…」




飼育員さんの説明を受け、ドキドキしながらその仕草を行う。



まずは手をあげて、くるくると回す。




するとイルカさんはその場で立ったまま器用に回ってくれて、客席から歓声が上がった。




うわっうわっ、どうしようあたしの指示ちゃんと伝わってる!!



今度はバイバイと手を振れば、イルカさんは立ったままバックで泳いで行った。




うわーうわーっ可愛いっ!!




「よかったね。」



暁くんも柔らかく微笑んでくれて、あたしの顔には自然と笑みが広がった。




「じゃあ最後でーす!彼女さん、ここに立ってくださーい!!」



か、彼女さんではないのだけど、言われた通りの場所に立つ。



…すると。




チュッ




いつの間にか戻っていたイルカさんが水の中から飛び上がって、あたしに軽くキスしたのだ。


「―――!!」




その感触は独特で、ビックリして固まるあたし。



悪戯っぽく笑う飼育員さんだけど、暁くんだけは不満げで、それに気付いた飼育員さんは苦笑いを浮かべていた。



あたしはなんだか不満そうな暁くんが可愛くて、堪えきれずに笑いをこぼしていた。