【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





それからウミガメを見たり、大きなサメを見たりした。



暁くんの言ったことが気になってはいたのだけど、次々とあたしの興味を引くものに誘導されて、いつの間にやらあたしの頭からその疑問は抜け落ちていた。




「柚、ショーをやっているよ。見ようか?」



見たい見たい!!


大きく何度も頷くと、暁くんはいつものように柔和に微笑んだ。



あたし、暁くんのこの笑顔がとても好きだ。



あたしまで穏やかにしてくれる、何もかも包み込んでしまうようなこの優しい微笑みが、好き。




「行こうか」




差し出してくれる、この温かい手も。



暁くんの手をぎゅっと握りしめて、中へと入る。



内容は、イルカのショーだった。



プールの中をグングン泳いだかと思うと、大きな輪をくぐったり、すっごく高くまで飛び上がったり。



目の離せない動きに、あたしはあっという間に引き込まれた。





「さぁて!ここで、お客さんの中からショーのお手伝いをしてくれる方を選びまーす!!」




飼育員さんの声に合わせて、イルカさんは陸の上でパタパタとヒレを動かす。




ショーの手伝い!?


うわ、どうしよすっごくやりたい!!




でも、手をあげているのは小さな子供ばかりで、ちょっと上げにくかった。



暁くんにも恥ずかしい思いをさせてしまうし、諦めよう。




しかし、たくさんの手が上がる中、ふいにあたしの左手が フワリと上がる。



見ると、あたしの手を握った暁くんがその手で手をあげていた。




えっ、えっ!




あたしが驚いているのを見て、クスリと悪戯っぽく笑う暁くん。