【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐




確か前に来たときは、ハリセンボンの写真だった。



それも可愛かったけど、やっぱりイルカは可愛い。





…くいっ、くいっ。



暁くんの福の袖を軽くひっぱる。



「ん?どうしたの?」



“見て、イルカ。”



口パクで言ってから券を見せると、すかさず暁くんも微笑んだ。



「ホントだ、可愛いね。」




わかってくれたことが嬉しくて笑顔で頷き返す。




「柚はイルカ好きだよね。」




“大好き!”




「…俺も、大好き。」




目を細め、まるで愛しいものでも見るような目をして言うものだから、あたしに言われたかのような錯覚に陥った。




ドキドキと胸の鼓動が速まり、なんだか熱い。




そんな中ようやく笑い返すと、暁くんも思い出したようにポケットから自分の券を取り出した。



「…ああ、俺のはこれだった。」



覗き込んでみると、暁くんのはペンギンだった。




…わあ、可愛いっ!!



ペンギンもいいなぁっ!




「柚はペンギンも好きなの?」



“だって可愛いもん!イルカも好きだけど、ペンギンも好きっ”



今度はケータイのメール画面で答えると、暁くんは楽しそうに笑った。




子供っぽいって、思われちゃったかな?



でも、好きなんだから仕方ないよね?



それに暁くんはこんなことであたしをバカにしたりしない。



あたしの全部を包み込むようなその優しさに、あたしは甘えっぱなしだ。