【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐




“やっぱりそうなんだ。聞いてもいい?”



ほんの少しアクセルを踏んで、車を進ませて暁くんはニコリと微笑んだ。



「ああ。君だよ、原因は」



あたし…?



予想外の言葉に、一瞬思考が停止した。



「柚に、頼まれたりお願いされたりするのって嬉しいんだ。前は遠慮して何も言ってくれなかったから。」



そう、だっけ…。



「それにさ、頼ってもらえたり甘えてもらいたいものでしょ、好きな子には。だから、もっと甘えてほしいな。」



もっとって…。



あ。もしかして前に席を外させる口実に買い物に行ってもらった時、全然嫌そうじゃなかったのはそういうこと…?



「君が喜んでくれるなら、俺の財が尽きたって構わないよ。」



真顔でそんなことを言われ、思わずドキンと胸が高鳴った。



…“ダメだよ、自分で大切に使わなきゃ”



やっとの思いでそれだけ返すと、暁くんは苦笑いした。



「ホントにいい子だね、柚は。」



こんな普通のことでいい子って、暁くんの基準がわからない…。



「…俺の知り合いにこんなこと言ったら、ホントに全部使われちゃうかもな。」



え、暁くんの知り合いの人ってそんなにお金使うの!?



あたしがビックリしたのを見て、暁くんは「なんでもないよ」と笑ってあたしの頭を柔らかく撫でた。





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渋滞の原因はどうやら工事だったらしく、すぐに抜けることが出来た。




それからものの数分で水族館に着くことができて、一緒に水族館に入る。



手渡された入館券には、可愛いイルカの写真がプリントされてあって、無意識に口許がほころんだ。