【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






それから、店員さんが何着か服を持ってきてくれて、その中から店員さんが特にオススメしていたワンピースを試着した。




小花柄で落ち着いた色合いで、襟元が深くて膝上スカートがふんわりした、女の子らしくて可愛いシフォンワンピ。




それに店員さんは薄手ニットのカーディガンと、ちょっとヒールのある可愛いサンダルを合わせた。




本当にあたしに似合っているかな?って疑ってしまうような、可愛いコーデだった。




変って言われたらどうしよ…。



自分の姿を何度も鏡で見てから、ようやく決心をしてカーテンの隙間からそっと顔を出す。





「終わった?」





あうっ!!




思ったよりも近くにいた暁くんに、少し驚く。




だって、こんなそばにいたなんて思わないから…。




「見せて?」





ニコニコ楽しげな暁くんに言われ、そっとカーテンを開けて外に出る。




あたしの姿を見た暁くんは一瞬だけ目を見開いて、だけどすぐに目を細めて柔らかく笑った。





「…うん、よく似合ってる。」





“変じゃない?”





口パクで言うと、暁くんはすぐに頭を振った。





「変じゃないよ。すごく、綺麗だよ。」




ドキッ、とまた胸が弾む。





「これにしよう、これがいい。」





満足そうに笑って、暁くんは店員さんを呼び止める。





「すいません、これ下さい。あと、このまま来ていきます」




「はい、かしこまりました。」




にっこりとお姉さんは笑い、服の値札を切って制服を袋に詰めてくれた。




いつものことだけど、やっぱり買ってもらうのは悪くて。




普通にお金を払おうとした暁くんの袖を掴むと、ふわりと笑ってあたしの頬を撫でた。





「また君は遠慮するんだね?俺が君の綺麗な姿を見たくて勝手にしたことなのだから、気にしなくてもいいよ?」






う…。




あたしが弱い暁くんの笑顔と声のダブルパンチに結局何も言えなくなってしまい、素直にありがとうと言うと暁くんは満足そうに微笑んだ。