口の中のチョコが溶けきったタイミングで、優輝ちゃんは唐突に固い表情をした。





「柚、あたしね…すごく怖かったんだ。」





今日から変わったあたしの呼び名にも慣れた。





何が?と、首をかしげると今度は悲しそうに小さく笑う。





「プレゼントを買いにいった日。あたし、何も出来なくて、ごめん。」






優輝ちゃんは悪くないのに、どうして…。





あたしがすぐに首を振ると、感傷にひたるように窓から遠くの景色を眺め、ポツリポツリと話し始めた。






「あたしね、中学のときにも同じ後悔してるんだ。」






優輝ちゃんの表情から、すごく大切な話で、辛い話だということはすぐにわかった。





だから、あたしも表情を固くして黙って聞いた。






「幼稚園の頃から、ずっと親友だった女の子がいたの。小学生になってもずっとクラスも一緒で、毎日一緒に帰ってた。けど中学になって、クラスは離れた。あたしは一組、その子は五組。」







教室が遠いせいもあって会う機会も減って、いつの間にか一緒に帰ることもなくなって、疎遠になってたの。





そう言って優輝ちゃんは、胸ポケットから学生証を取り出した。





大切そうに挟まれた写真には、少し幼い笑顔の優輝ちゃんと、知らない可愛い女の子。




懐かしそうに写真を指でなぞって、また話しはじめた。






「あたしは、クラスにたくさん友達も出来てすごく楽しかった。別に彼女のことを忘れたわけじゃなかったの。ただ、信じてただけ。離れても絆は変わらないって。近くに居すぎて、どれだけ大切な存在かをよくわかってなかった。」





優輝ちゃんの悲しそうな表情に、あたしまで昔を思い出す。






「そういうことって、よくあるじゃない?いなくなってから、どれだけ大切だったかわかるって」






わかるよ、すごく。