「遅いねぇ、暁さん。」




そうだね、と優輝ちゃんの言葉に頷く。





お昼ころに暁くんから体調を気遣うメールが届き、学校にいると返したらすごく驚かれたし、心配された。




もう大丈夫ということを懸命に説明すると、今日も迎えに行くから待っててと返ってきた。





ただ、ちょっと用事があるから少しだけ遅くなるって。




いつもなら遠慮してるとこだけど、今日はちょっと事情が違うから大人しく待つことにした。




その事情というのが今日は例の木曜日、暁くんのバースデイだということだ。





みんなが準備している間、時間まであたしが暁くんを捕まえていて、リコールへ連れていく。




そういう計画だった。





ちゃんと、優輝ちゃんに一緒に見てもらったプレゼントもある。





そのために、今は優輝ちゃんと教室でなかなか来ない暁くんを待っていた。




暁くんが言う用事が、一体どんなものなのかも知らずに。






「柚、食べる?」





優輝ちゃんは笑ってポケットから出したチョコレートを、差し出した。




“食べる。ありがとう”





口パクで言ってそれをもらうと、やっぱりチョコは全然溶けてない。




むしろ、冷えててカチカチだ。




“どうしていつも、いろんなお菓子出てくるの?溶けないの?”




思いきって聞いてみると、優輝ちゃんはニヤリと笑った。





「ふっふっ、ようやく聞いてくれたね。でも残念!秘密を教えるわけにはいかないのですよ。これは泉堂優輝七不思議のひとつでね、聞いてしまうと…」






優輝ちゃんは、そこで詰まる。




目に見えて、焦っていた。





ああ、考えてなかったんだなと苦笑する。





“うん、聞かない。”





優輝ちゃんは、ホッとした顔をしてチョコを口に放り込んだ。