「だから、柚が苦しんでるときは俺も苦しいし、守ってあげたいって思う。柚の苦しみくらい、一緒に背負ってあげる。」





暁くんの優しい瞳には、いつもとは少し違う強い光が宿っているように見えた。





「柚が笑いかけてくれなかったり、俺から離れていってしまうことの方が何倍も何十倍も辛いことだから。それだけ君が大切な子なんだ。」





ふわり、とあたしの頬に気遣わしげに触れる優しい手。





「絶対に君の背負うものからも、君自身からも目は背けない。だから、俺を信じてほしい。」




暁くん………。





「…責め苦の共有をしよう、柚。」





くいっと、長い指で顎を掬われる。




そっと近づいてきた、暁くんの綺麗な顔に心臓が跳ねた。





もちろんそんなことをされるのは初めてで、どうしていいかわからず身体に力が入る。





そんなあたしの心情を見透かすみたいに、床に置いた手に暁くんの手が重ねられた。





そしてぎゅっと包まれる。





暁くん―――…。





不思議と身体から力が抜けてゆく。




ふわり、と触れた暁くんの唇はあたしの思ったところじゃなくて額だったけれど、優しくて温かくて。





頬に、一筋の滴が流れ落ちた…。






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携帯電話を使って、ゆっくりと言葉を綴ってゆく。





怖かった。



すごく怖かった。





けれど信じてくれと言われて、それを拒否してしまえるほど暁くんの存在は小さくなかった。



信じてみようと思った。





唇から伝わった、暁くんの優しさを信じようと思った。