「…俺じゃ、無理だった。」





俯く京輔くんの表情は、わからない。




ただ、白くなるまで拳を握りしめ、吐き出される声音は苦しげだった。





「俺じゃ、柚を救ってやれない。アンタならあいつを救ってやれるか?」





それは、俺に任せるということか。




俺は迷わず答えた。






「絶対に救うと誓おう。」





その言葉を聞いて、京輔くんはわずかに表情を緩めた。




「あいつ、最近よく笑うようになった。急に女らしくもなった。それって、あんたの影響だろ。」





俺の…?





「ちょっと前の柚はな、笑ってても人間味がないっていうか、哀しそうに笑う感じだった。けど、最近じゃ普通の女みたいに笑う。俺はその変化がホントに嬉しかった。…知らねぇ男の影響だとわかっててもな。」






けど、と彼は続けた。





「今の柚は、ちょっと前の笑い方すらしない。完全に3年前のあいつに戻っちまってんだよ…!!俺や兄貴が3年もかけて、ようやくここまで来たのに!!」




京輔くんは、本当に悔しそうだった。




そうか、なんとなくはわかっていたが。





京輔くんは、俺と同じ目で柚を見ているんだ。






自分が一番愛しい女の子を見る、目で。






それなのに、彼は身をひいた。





柚のために、柚の幸せを願って。





柚の、笑顔のために。







「京輔くん…。」





「あいつを、頼んだ。ただ一つ、これだけは忘れないでくれ。…あいつは、責められるべきじゃない。一番苦しんでたのはあいつなんだ。」




「わかった。」