――――― side 優輝 ―――――
「ばいばーい、優輝ー」
「あ、うん。ばいばーい」
…今日も、柚ちゃんは学校に来なかった。
あれから何日かたって、今日は水曜日。
明日は暁くんの誕生日なんでしょう?
一生懸命プレゼント選んで、あんなに楽しみにしてたのに。
ちゃんと、渡せるの?
あの日の柚ちゃんの表情が忘れられない。
まるで、心が死んじゃったみたいだった。
何も映さない、 光のない瞳があまりにも…。
あたしの知る柚ちゃんは、ニコニコして、可愛くて、優しくて。
せっかく仲良くなれたのに、このままなんて嫌だよ。
毎日毎日、何度柚ちゃんにメールを送っても返信はない。
家の場所も、知らない。
八方塞がりだった。
どうしたらいいんだろう、頭を悩ませながら校門をくぐったその時。
あの人は…。
あたしの目にうつったのは、車に寄っ掛かって誰かを待つ大学生くらいの男の人。
あたしと同じく下校していた女子が、あの人カッコいいと噂する声が聞こえた。
「……暁く…、暁さんっ!!」
ある程度遊ばせた茶色の髪に、すらりと高い背、長い手足、モデル顔負けのルックス…。
間違いなく、彼だった。
大して話したこともないのにあたしは、彼に声をかけていた。
柚ちゃんを救えるのは彼しかいないと、彼ならきっと柚ちゃんを助けてくれる。
そんな確信があった。

